Far away ~いつまでも、君を・・・~

夏休みが終わり、新学期が始まり、すぐに定期試験、そして文化祭。尚輝が生徒たちと共に、慌ただしくも充実した時間を過ごしているうちに、厳しかった暑さは、やがて爽やかな秋の風に乗って去って行った。


そしてこの日、颯天高校弓道部は、秋の新人戦を迎えていた。入部するまで、弓を握るどころか、見たこともなかった13名の1年生が、1学期での基礎練習から夏合宿を経て、いよいよ対外試合デビュ-を果たす。


この日、生徒たちは学校に集合してから、揃って会場入りする。顧問として、彼らを引率する為、尚輝は身支度を整えていた。


「尚輝、出来たよ。」


そこに声を掛けて来たのは、恋人の京香。昨日のおうちデ-トの後、そのまま泊った彼女が、朝食を用意してくれた。


「ありがとう、今行くよ。」


そう答えた尚輝は、鏡に写った自分の顔を確認すると、洗面台を離れた。


食卓には、尚輝の好きな焼き魚に卵焼き、それに味噌汁にご飯という、和食の朝食が並べられていた。


「いただきます。」


就職を機に、1人暮らしを始めた尚輝。過去2年は慣れない家事を億劫がり、食事もついつい外食に頼ることが多かったが、6年間の1人暮らしを経て帰郷した京香は、料理はお手の物。こうして手料理を振舞ってもらう機会も増え、尚輝は心から感謝していた。


「京香の飯は本当に美味い。お陰で俺もこれで力が出るよ。」


朝から旺盛な食欲を示す尚輝に


「別に尚輝が試合に出るわけじゃないじゃん。」


と京香は笑う。


「バカ、応援するのもパワ-がいるんだ。」


大真面目な顔でそう言うと、尚輝は


「おかわり。」


京香にあっという間に空になった茶碗を差し出す。


「確かに、尚輝が手塩にかけて育てた生徒たちの大会だもんね。力入るのも無理ないし、せっかく早起きして作ったんだから、そうやってモリモリ食べてくれた方が、こっちも嬉しいけどね。」


そんなことを言いながら、京香は受け取った茶碗に、山盛りのご飯をよそって、尚輝に戻した。


やがて、充分な腹ごしらえをした尚輝は


「じゃ、行って来るよ。」


「いってらっしゃい、気を付けてね。」


京香に見送られて、部屋を出る。


(いってらっしゃいか・・・悪くねぇ。)


恋人の見送りを受け、尚輝は思わずニヤついていた。
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