Far away ~いつまでも、君を・・・~
「ということでさ。」


表情を改めた彩は


「私も安心して、これで帰れます。」


尚輝に笑い掛ける。


「彩先輩、いろいろありがとうございました。」


「ううん。それより、葉山さんと弓道部のこと、しっかり頼んだよ。」


「それは・・・もう彩先輩にご心配を掛けないようにします。」


「あと彼女に、私が謝ってたって、ちゃんと伝えといて。」


「大丈夫です、あいつだって本気で怒ってたわけじゃないですから。」


そう答えた尚輝に頷いてみせた彩は、千夏と共に車を降りる。


「失礼します、葉山も気をつけてな。」


そう言って走り去る尚輝を、2人は見送った。


「尚輝っちの彼女って、京香先生だったんですね。」


あっという間に遠ざかって車を見ながら、千夏がポツンと呟くように言う。


「気が付いちゃった?ま、さっきスマホから声、だだ洩れだったもんね。」


そう言って、彩は苦笑い。


「大丈夫って言ってたけど、京香先生の声、かなり怒ってたような気がする。大丈夫かな、尚輝っち・・・。」


心配そうな千夏。


「大丈夫。あの2人は、6年の遠恋を乗り越えたんだから。ちょっとやそっとじゃ、壊れたりしないよ。」


「・・・。」


「ちょっと残念?」


「ううん。悔しいけど、尚輝っちは私のこと、本当に何とも思ってないことがよくわかりましたし、京香先生なら、お似合いだと思うから、諦めが付きます。」


「千夏ちゃん・・・。」


「さっきも言いましたけど、今日は帰ったらいっぱい泣きますけど、でも明日からはすっきり、また前を向いて行きます。」


そう言って、千夏は彩に笑顔を向ける。


「そっか、ならよかった。あと、これは余計なことなんだけど・・・。」


「わかってます、お2人のことは絶対に誰にも言いません。もうこれ以上、二階先生にご迷惑はおかけしたくありませんから。」


「ありがとう。」


顔を見合わせて、笑顔を交わす2人。


「さぁ、私も帰らないとなぁ。明日からまた仕事、頑張らないと。」


そう言って、1つ伸びをした彩は


「行こうか。」


と言って改札口に向かおうとするが


「彩さん。」


千夏に呼び止められる。


「最後に1つお聞きしてもいいですか?」


「なに?」


「高校の時、二階先生が好きだった人って、彩さんですよね?」


「さぁ、どうだったかな?昔のことだから、忘れちゃったな。」


そう言って、ニコリと微笑むと、彩は歩き出した。
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