Far away ~いつまでも、君を・・・~
「俺はまだ16年しか生きてないけど、こんな思いになるのは、初めてなんです。人を好きになるって、こんなにも熱いものが、自分の身体の中に漲るものなんだって、本当に初めて知りました。だから、この思いを相手に伝えないなんて、ありえない。伝えなきゃいられなかった。だって伝えなきゃ、その人に絶対に伝わらないんだから。だから・・・。」


「怖くなかった?」


「えっ?」


「その思いが必ず相手に届く保証なんて、何もないんだよ。もし断られたらどうしよう・・・そうは思わなかった?」


彩は真剣な表情でそう聞く。


「もちろん思いましたよ。そして実際に俺、先輩に振られたし。」


そう言って、苦笑いする尚輝。


「それでも、俺は黙ってられなかった。振られて傷つくことより、思いを抱えたままでいる方がよっぽど苦しかったから。」


「・・・。」


「それに、1度や2度振られたって、諦められないよ、本当に好きなら。だから・・・。」


そう言って、自分を見る尚輝に、彩は息を呑む。


「俺は絶対に諦めない。先輩、俺は先輩が好きです。付き合って下さい。」


そう言って、頭を下げる尚輝。そんな尚輝を、唖然とした表情で見ていた彩は、彼が顔を上げた途端


「だから無理だって、言ってるじゃない。だいたい、こんなとこで告るなんてバカじゃない?」


冷たく答える。だが、次の瞬間、ガサガサという音がして


「キャッ!」


と悲鳴を上げた彩は、とっさに尚輝に抱き着いていた。


「大丈夫、キツネかなんかが動いただけです。」


そんな彩の身体を、しっかり抱き止めて、耳元で囁くように尚輝は言う。その言葉にハッと我に返った彩は、慌てて尚輝を突き放す。


「いい香りだった・・・。」


一方、にやけながら、そんなことを言い出す尚輝に


「バカ、変態!」


と罵声を浴びせる彩。


「変態はひどいなぁ。どんな理由でも、好きな人が抱き着いて来てくれたんですから、喜んだっていいでしょ。」


「・・・。」


「先輩はさっき、何があったって、俺になんかしがみつかないって、宣言してましたよね。」


痛いところをつかれて、黙る彩。


「世の中、何が起こるかわからない。だから俺は、これからも勝手に先輩を好きだって気持ちを持ち続けるし、先輩が卒業するまで、まだ1年半以上あるんだから、絶対に諦めない。」


「・・・。」


「さぁ、急ぎましょう。あんまり遅くなると、みんなに心配される・・・というか勘繰られちゃいますよ。俺は別にそれでも構わないけど。」


そう言って歩き出した尚輝の後ろ姿を、ふくれっ面で眺めながら、彩も後に続いた。
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