Far away ~いつまでも、君を・・・~

それから、尚輝は姿を消した・・・というのは、少し大袈裟か。


試合が終わって、学校までみんなと一緒に戻って来たのは間違いない。児玉の総括を聞き、三々五々、解散となったあと、彩は尚輝と話したくて、いつもの花壇に向かった。だが、当然現れると思っていた尚輝は、とうとう姿を現さなかった。スマホも留守電、LINEは既読にすら、ならなかった。


翌朝、心配になって、彩が彼の教室を覗くと


「二階くん、今日はお休みです。担任にお母さんから連絡が来たそうです。」


彼女の姿を認めた京香が、ちょこちょこと近づいて来て、そう告げた。


「そっか。体調悪いのかな?昨日もいつの間にか、帰っちゃったし。」


「さぁ?私なんかに聞くより、廣瀬先輩の方が、よっぽど本当のこと、わかってるんじゃないですか?」


自分の問い掛けに、冷たくそう返すと、京香は踵を返す。


(菅野さん・・・。)


その彼女の態度に、彩は何も言えなかった。


悶々とした思いを抱えながら、授業を受け、放課後となり、いつものように、弓道場に向かう。しかし、いつもなら一番乗りしていて、元気よく挨拶して来る尚輝の姿は、当然ない。そして・・・


「今日は2年生から、練習を始めて下さい。」


彩は主将として、指示を出す。そう、彼女たち3年生は、事実上、今日から部活の第一線を退くことになるのだ。


「これからは、いよいよ勉強漬けの毎日だなぁ・・・。」


その日の帰り道、町田がやれやれと言わんばかりに言った。


「仕方ないよ、受験生の宿命だもの。」


諦め顔で遥が応じる。


「宿命か・・・そうだよね。みんな通る道だものね。」


そう続けた彩に


「とりあえずさ、なんか食っていかねぇか?これからは、なかなかそういう機会もなくなるし、一足先に主将、副将としてのお疲れ様会も兼ねて。」


町田が誘いをかけてくる。その町田の顔を、彩は少し眺めていたが


「いいの?」


と聞き返した。


「なんで?」


「だって、お邪魔虫じゃないかと思って。」


その彩の言葉に、固まる遥と町田。
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