Far away ~いつまでも、君を・・・~
「ア~ァ、ショックだなぁ。遥の一番の親友のつもりでいたのに、こんな大切な報告がないなんてさ。」


そう言って、チラッと彩に視線を送られ


「ごめん、彩。ずっと隠しとくつもりはなかったんだよ。でも昨日の今日だから、つい・・・。」


「本当に悪気はなかったんだ。もう少ししたら、そう後任の主将、副将が決まったら真っ先に廣瀬には言うつもりだったんだ。信じてくれ。」


慌てて弁明する2人。


「3年間、一緒にやって来て、最後の1年は主将、副将として、弓道部を力を合わせて引っ張ってきたつもりだったのに、まさか肝心な時に蚊帳の外に置かれるとはなぁ。正直、人間不信。」


尚も責めるように言う彩に


「彩、本当にごめんなさい。」


そう言って、深々と頭を下げる2人を、少し見ていた彩は


「ウソウソ、冗談だよ。」


と笑顔になる。


「彩・・・。」


「昨日の帰り道で?」


「う、うん・・・。」


恥ずかしそうに頷く遥。


「そっか。ま、私にしてみれば、やっと?としか思えないけどね。」


「廣瀬・・・。」


「とりあえず、詳しいお話は、食べながら伺いましょうか。本当なら、お祝いに私がごちそうしなきゃいけないんだろうけど、今日は私への隠し事のお詫びの印として、2人の奢りだからね。」


いたずらっぽい表情で、彩は言った。


そしてファミレスに入り、仲良く並んで座る2人によると・・・。


試合の1週間前、顧問と主将、副将とのミーティングがあった帰り、町田に学校裏手の河原に誘われた遥は


「突然なんだけど・・・俺、香田のことが好きなんだ。」


とまさしく唐突に告白されて、びっくりしてしまう。


「お前との距離が近すぎて、言い出すタイミングがずっとわからなかった。最後の試合の1週間前に迷惑だよな。でも、もう気持ちが抑えられないんだ。だから・・・言わせてもらいます。よかったら、俺と付き合って下さい!」


そう言って頭を下げた町田に


「今、そんなこと、急に言われても困る・・・。」


困惑顔で遥は答えた。


「香田・・・。」


その答えに、あからさまに落胆する町田。なんとも気まずい空気に包まれた2人だったが、やがて、遥がこんなことを言い出した。


「町田くん。」


「うん?」


「じゃ、こうしよう。今度の試合で、あなたが個人戦で予選通過出来たら、お付き合いさせてもらいます。それでいい?」


「わかった。」


その言葉を聞いた町田は、愁眉を開いたような表情で頷いた。
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