Far away ~いつまでも、君を・・・~
「随分もったいぶったね、遥。」


「えっ?」


「さっきも言ったけど、2人が想い合ってるの、私とっくに気付いてたんだけど。」


「廣瀬・・・。」


彩にあっさりと、そう言われて、言葉を失う2人。


「で、マチヒロは予選通過出来なかったよね。遥はそれでよかったの?」


更に彩に斬り込まれて


「う、うん。彩に見破られてたように、私も本当は町田くんのこと好きだったし、最後の試合控えてるのに不謹慎かな、なんて考えちゃって、つい言っちゃっただけだったから。まして、全力で戦った彼の姿見たら、結果なんかもう、どうでもよくて。」


と、はにかみながら答える遥。


「それは、それは・・・料理だけじゃなく、ごちそうさまでした。」


それを聞いて、からかうように言う彩。


「もう、彩!」


顔を真っ赤にして、俯く遥に


「なぁ、もう勘弁してくれよ、廣瀬。」


町田も困惑顔で頭を下げる。


「わかった、わかった。」


そう笑いながら言った彩は、しかしすぐに表情を改めると


「でも、2人の想いが通じ合って、本当によかったな。」


しみじみと言った。


「私はずっと、2人はお似合いだと思ってたし。」


「彩・・・。」


「とにかく、よかった。ねぇマチヒロ、私が言うまでもないけど、遥は本当にいい子だから。君にもったいないくらいなんて、言うつもりはないけど、でも絶対に大切にしてね。もし遙を悲しませたり、泣かせたりしたら、主将権限で、弓道部のOB・OG会から、永久追放するから。そのつもりでね。」


「わかったから、それだけは勘弁してくれ。」


彩のキツイ祝福に、町田がタジタジになりながら頷く。


「彩、ありがとう。でも町田くんは、そんな人じゃないから。」


そう言った遥に


「もう『町田くん』じゃないでしょ?」


と彩のツッコミは続く。


「う、うん・・・博人、くん・・・。」


とこれまた、顔を真っ赤にして呼び掛ける遥。


「マチヒロも返しなよ。」


「あ、ああ・・・遥。」


これまた照れ臭そうに町田が呼び返す。


「うん、合格。」


頷いた彩に


「お前、容赦ねぇな。」


町田がようやく言い返し、テーブルは笑いに包まれた。


そのあとは、賑やかに食事を楽しみ、2人と別れた彩。しかし、その表情は


(そうだよね。本当に相手のことが好きなら、結果なんか、関係ないよね・・・。)


打って変わって、沈んでいた。
< 72 / 353 >

この作品をシェア

pagetop