Far away ~いつまでも、君を・・・~

今日も慌ただしく、1日が過ぎて行った。


(今日もなんとか、無事に終わったな。)


ノートパソコンをパタンと閉じると、廣瀬彩はフッと息をついた。大学卒業後、この「ホテル ベイサイドシティ」に就職して4年目、彩は25歳になっていた。


時計を見れば、定時はとうに過ぎている。1つため息をついたあと


(明日のお休み、久しぶりに弓引きに行こうかな。)


そんな考えが頭に浮かんだ。


大学進学の為に、彩が都会へ出てから、もう丸7年が過ぎた。大学でも、迷うことなく弓道部の門を叩いた彩は、4年間、文字通り弓道漬けの日々を送った。


大学の弓道部の活動は様々。体育会部活として、弓道に心血を注ぐことを求められる部もあれば、練習は週に2~3回。あとはキャンパスライフを謳歌しなさいという方針の部もある。


尚輝の大学が後者だとしたら、大学弓道界の中でも「強豪校」とされていた彩の大学は、間違いなく前者であった。練習は週6回、それに高校とは違い、日曜日は公式、非公式含めて、ほぼ試合があった。


更に高校では弓道部は、男女混合の部活とされていたが、大学ではほぼ男女は別活動であった。厳しい上下関係もあり、また


「学生の本分は正課(勉強)。正課を疎かにする者は課外活動(部活)に参加する資格はない。」


との方針で、「弓道をする為に大学に来ている」などという考え方は一切認められなかった。


「授業をサボったり、必要な単位を獲れないような者は、試合に参加させない。」


入部してすぐのオリエンテ-ションで、見るからに厳めしい雰囲気の顧問に、釘を刺すようにこう告げられた。


実際、練習は最終授業が終了する17:00〜19:30までが「正規練習」。その後は22:30までが「自主練習」時間とされた。授業が少ない土曜日は11:00~15:00が正規練、以降が自主練。


正確に言えば、1週間の内、月木は終日自主練となっていて、強制ではない。他の日も正規練が終われば同じで、それらの時間は、プライベ-トを優先しても、なんら差し支えはないのが建前ではあるのだが、実際には、学年が上がり、公式戦も近いとなれば、そんな悠長なことは、段々言っていられなくなるらしかった。


「別に禁止されてるわけじゃないけど、ウチの部にいたら、恋愛もバイトも現実的には無理だから。それが嫌なら、早めに見切り付けて、辞めちゃった方がいいよ。」


そんな先輩からの真顔の忠告が、全くの真実だったことを、彩が思い知るまで、大した時間は必要ではなかった。


(これじゃ、自分の時間なんて、いつあるの?)


さすがに彩も、内心悲鳴を上げた。
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