【電書&コミカライズ】推しとは結婚できません!〜最強魔術師様の結婚相手がわたしだなんて、めちゃくちゃ解釈違いです!〜

25.目を背けないで

(どうしよう……)


 流されて客席に座ってしまった。今のわたしは皇女じゃなくてただの店員だというのに。窓際の奥まった席だから、他のお客さんからわたしの姿は見えないけど、なんだかとっても居心地が悪い。


「エレン様、やっぱりわたし、仕事に戻ります。制服のままじゃ目立つし、なんだか申し訳ないし、落ち着かなくて……」

「大丈夫だよ。リリアンのことは周りから見えないように俺が魔法をかけるし。君のことを咎めるような人は誰もいないだろう?」

「そりゃあそうなんですけど……」


 一番の懸念事項は格好云々ではなく、エレン様と対峙しているこの状況にある。

 だってわたし、エレン様と一緒にいるときの自分を信用していないんだもの。舞い上がって、テンパって、変なことを言ったりしたりしそうで、かなり怖い。

 前はエレン様が来店してくださると、ただただ嬉しくてたまらなかったのに、どうしてこんなに違うんだろう?
 どうして――――多分、近づきすぎたのが問題なんだと思う。


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