れんれんと恋するための30日


夜になり、福は静かに眠りについた。


「幸~、ただいま」


福の意識が奥深いところへ落ちて行くと、幸の存在を感じ始める。


「幸、ミッチーがストーリーを考えてきてって。
私には絶対無理だから、お願いね」


幸の笑い声が、優しく福の耳をよぎる。


「分かった。
深夜に、この体借りていい?」


「もう、幸の体なんだから好きに使っていいんだよ」


「じゃ、あとで書いて机の上に置いておくから、ミッチーに届けてね」


「幸、私のしてること、問題ない?
今は自分の事ばっかりで、幸の事を全然思いやれてない。
幸の体を借りてるのに。

何か嫌なことがあったら、ちゃんと言ってね」


また、福は耳元で、幸の優しい笑い声を感じた。


「福の好きなように使っていいって言ったじゃん。
 気にしなくていいからね」


「でも…
分かった、そうだよね。
ここまできて、私が迷ったら全部台無しになる…」


「そうだよ、福の思ったようにして全然構わないんだから、ね」


幸は本当にそう思っている。
もしかしたら、一人の人間として生まれてくるはずだった私達にとって、幸の体は福の体であって何も不思議ではない。
それが、きっと、双子の絆だと思うから。


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