れんれんと恋するための30日
幸は私で、私は幸で⁇
次の日、福は幸から預かったミッチーへの原稿を持って、漫画研究部を訪ねた。
放課後だというのに、部室はガランとしている。
福は部室に入り、乱雑に積み重ねている色々な漫画の原稿を見ていた。
「幸、早いじゃん」
福が振り返ると、奥の机に拓巳が座っていた。
「ミッチーに物語の原稿を持って来たんだけど」
「もう、来ると思うよ」
拓巳はそう言いながら、何かを夢中で描いている。
福は、拓巳の隣の席に座り、拓巳が描いているものを覗きこんで見た。
「ちょっと、息詰まってるんだ。
謎解きで解決したいんだけど、中々、前後の話を合わせるのが難しくて」
拓巳が描く漫画は、少女漫画に出してもいいくらいに人物画がとても美しかった。
福は、拓巳の織りなす漫画の世界が一目で気に入った。
「締切が近いのに、マジでヤバいよ」
「締切って?」
「コンクールだよ。
ミッチーと幸も出すんだろ?」
「え? そうなんだ…
あ、うん、そうだった」
拓巳は手を止めて、何かを探るような目で幸を見ている。
「な、幸、マジで何かあったのか?
幸の変身ぶりに、皆、驚いてる。
俺は、幸が変身願望があったなんて思ってもなかったから、なんか素直に受け入れられないんだ」