れんれんと恋するための30日


「あ、うん…
拓巳が驚くのもしょうがないよね。

福が、そう、双子の妹の福がね、夢に出てきて、私の分まで人生を楽しんでって。
そしたら、今までの私は、大人しすぎて何もしてなかったことに気づいたの」


拓巳はまだ手を止めている。
そして、幸の一つ一つの動きをじっと見ていた。


「福ちゃんの話を、そんなに簡単にできるようになったんだ。
それは幸にとっていい事なのかな? 
俺は、今までの物静かで優しい幸が恋しいけど」


拓巳はそう言うと、また手を動かし始めた。


「幸、明日の朝、一緒に校庭を走らないか? 
体育祭までに体を鍛えとかないとだろ? 
明日からしばらく一緒に走ろう。
梨華も誘っとくから」


「う、うん、そうだね」


福は、今頃になって気づいた。
幸の今までの学校生活や、友達関係、そしてその中で生まれた信頼関係や愛情を、今の自分が全部壊していることを。

拓巳は、幸の事を真剣に愛している。
今は、幸はまだ何も感じていないかもしれないが、これから先二人は愛し合うことになるのかもしれない。


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