れんれんと恋するための30日


福は小さな声しか出なかった。
でも、蓮からの返事はない。


「れんれん、今日はごめんね…」


それでも、蓮は何も言わない。
福は泣きたくなった。
でも、16歳の高校生はこんな場所では泣かない。
福は自分にそう言い聞かせる。
福は、感情のコントロールが上手くできなかった。
それは神様からも言われていた事で、8歳の誕生日を待たずに死んでしまった福は、今でも魂は子供のままだということ。
もし、生きていれば、成長していく過程で色々な事を体験して、頭の中も大人になっていくはずだから。

そして、感情をコントロールする事は、この一か月、福がこの世界で過ごす上でとても大切な事だった。
でも、幼過ぎる感情の波は、色々な場面で福を困らせる。

蓮は幸が自分を呼んでいることに気づいていた。
さっきまで透子と一緒にいたせいで、今の幸は子供にしか見えない。
蓮は透子とつき合ってはいるけれど、透子の本心に触れたことは一度もなかった。
透子といると、蓮のいつものハチャメチャぶりは姿を消してしまう。

透子の大人っぽい雰囲気に圧倒され、自分らしさを出せずにいた。



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