れんれんと恋するための30日
幸は、特に今の幸は、蓮が声をかけなきゃ今にも泣きだしそうな顔をしている。
子供の時から、蓮はこの双子が大好きでいつでも守りたいと思っていた。
それは今でも変わらない。
電車の扉が開くと同時に、蓮は幸の右手を掴んで自分の方へ引き寄せる。
「行くぞ」
「れんれんのバカ、無視するな…」
二人は空いてる座席に座れた。
「お前、俺にバカって言える立場か?
昼休みに俺がどれだけ傷ついたか…」
蓮はわざと落ち込んだふりをして幸を見た。
「私がれんれんを忘れるなんて、絶対ないんだから…
生まれた時から死ぬ時まで、れんれんを忘れたことなんか一度もない」
「でも、安藤拓巳といるときは俺を忘れる」
幸はハッとした顔で蓮を見た。
「何それ?」
「安藤拓巳が幸を好きなのは見れば分かるよ」
「うん、知ってる…」
「じゃ、拓巳とつき合えば?」
蓮は隠し事ができない今の幸が可愛いし、でも、うっとうしかった。
幸はずっと黙っている。
蓮が顔を覗きこむと、大粒の涙をポタポタと落とした。