れんれんと恋するための30日


幸は、本当に福が愛おしかった。

一卵性双生児の絆がどんなものかは全く分からないけれど、福の存在を感じるだけで生きる活力が沸いてくる。
かけがえのない私の妹が、思い描いている全てのものを叶えさせてあげたい。
心残りなく、またあの世へ帰れるように。


「幸、透子さんって、どんな人か知ってる?
私、何だか、透子さんって嫌いにはなれないんだ。
こんな気持ちでれんれんを振り向かせることなんてできるのかな…」


「福、透子さんも、心にたくさん傷を持っている人だと思う。
透子さんが本当は何をしたいのか求めているのか、ちょっと考えてあげるといいかもしれない。
私が言えることはそれくらいかな」


福はこの世界へ戻ってきて、最初の週末を迎えた。
でも、土曜日も日曜日も何も予定は入っていないため、両日とも午後の4時からバイトを入れた。
でも、蓮は日曜日の午後からしかバイトを入れていなかった。

きっと透子さんとどこかへ出かけるのだろう。
福は蓮との恋を叶えるためには、透子から蓮を奪わなきゃならない。
でも、自信を持てない自分がここにいる。

透子の美しさは表面的なものではない。
人を惹きつける透子の柔らかい笑顔は、いつまでも福の頭から離れない。

福は幸のアドバイスを思い浮かべながら、幸の言葉の意味を必死に考えた。


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