れんれんと恋するための30日


土曜日は、ミッチーが部室で漫画を描く作業をしているため、、福も部室に顔を出した。
土曜日だというのに、漫研部はとても賑わっている。
福はミッチーの隣に椅子を持って行き、そこに腰を下ろした。


「幸、ちょうどいいところに来てくれた。
このシーンなんだけど、幸のイメージにあってるかな? 
ちょっと怖い?」


福はミッチーのおどろおどろしい漫画を直視できない。
それにあらすじもちゃんと分かっていない福は、何も言える立場じゃなかった。


「う、うん、いいと思う…」


「本当に?」


「う、うん」


ミッチーこと斎藤道は、幸の表情をじっと観察する。

道は、芸術家の家に生まれたせいか、幼い時から感性だけは人一倍鋭かった。
道の描く絵は、人間の内面を恥ずかしい程にあぶり出す。
だから、人物画を好んで描いた。
描かれた人にとっては、決して心地よい作品ではないことが多かったけれど。



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