君と笑い合えるとき
「聞こえなかった。何て言ったの? きこ」



くっと上を指す静流くんの指。

私は



「静流くんのばか!」



と,耳奥でわっとなる声をあげる。

聞こえてたこと,全部見てたのに。

その表情から,今も全部お見通しなのに。

爛々と輝く瞳に,私は悔しくなった。



「……あてたら,教えてあげる」



僕の事がすきなんでしょう? なんて,流石の静流くんも言えないでしょう。

そうたかをくくっているうちは,私はまだ静流くんに勝てないみたいで。

静流くんは余裕そうな笑みを浮かべて,いいよと言った。

予想外の反応に,私は顔を赤くする。

もし正面から尋ねられたら,恥ずかしいのは私の方だと気付いたからだった。



「ねぇ,きこ」



それは,耳を塞ぎたくなるような,簡単に喉へと張り付くとろりとした飴。

細かく,柔らかく,ふわふわした,わたあめ。

その正体は……心を惹き付け,最後まで離さない,どろどろの溺愛だ。



「好きだよ……きこ。……どうしたの,こっちむいて」

ー答えは,この言葉の返事。違う?



ああ,もう……っ。



「好きだよ,静流くんがすき!!! もっとずっと前から,ずっとずっと好き!!!!」



惜しみ無く上げられていく花火。

だけど,そんなものに負けないだけの声量は出せる。

今度こそ聞こえた?

そう熱の集まる瞳で見つめれば,静流くんはふわりと笑った。
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