千燈花〜ETERNAL LOVE〜
 ひぐらしの鳴く声が聞こえる。

 山代王さまにもお礼をしなくてはいけないし、頂いた翡翠の指輪も中宮さまから頂いた橘の手巾も、あの石の上に置いてきてしまった事がとにかく気がかりだ。

 外を見るともう陽は傾きオレンジ色の光が部屋の中に差し込んできている。

 はぁ…仕方ないわ、明日探しに行ってみよう。もう三日も経っているけれどまだあの場所にあるかしら…

 不安ばかりがつのった。心底気が気ではなかったが、なすすべがなかった。暫くして小彩(こさ)が戻ってきて言った。

 「山代王さまがいらっしゃらなかったのでお付きのものに伝えて参りました。あと明日もし体調が良いようなら、王様にご挨拶をするようにと、三輪(みわ)様より仰せつかりました」

 「ええ。明日の朝、必ずご挨拶に伺いましょう。午後は何か予定はある?」

 「いえ、何もないはずですが…どうかされたのですか?」

 「ううん、何でもないわ、部屋に三日間もこもっていたから、少し体を慣らさないと、、。明日は外に出て新鮮な空気を吸うわ」

 「では私もお供いたしますね」

 「ダメよ!あなたは私の看病でろくに寝ていないでしょ?明日の午後はゆっくり休んで頂戴、お願い」

 小彩(こさ)は不思議そうに私の顔を見ると、

 「はぁ…」

 と、答え首をかしげた。

 明日はあの湯に絶対に行かなくてはいけない。もし誰かに見つかり事が悪い方向に進んで万が一にも小彩(こさ)を巻き込んでしまったら一大事だ。全ての真実を話して混乱させたくなし、やはり一人で解決するのが最善の策だと思った。

 二つの大切な品が無くなっているかもしれないという不安と、あの夜の自分のした事がバレてしまうのではないかという不安で、その夜はほとんど眠れなかった。





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