千燈花〜ETERNAL LOVE〜
ヒヒーン、ヒヒーン
畝傍山が見えた、この山の麓だ…あった!きっとこの小道だ。私は馬を止まらせ下りると、昨夜通った小道を走り出した。辺りはもう薄暗く空には昨夜のように明るく大きな月がぽっかり浮かんでいた。
はぁはぁ…着いた…
目の前には昨夜と同じように月明かりに照らされた美しい池が広がっている。池の畔にある東屋を目掛けて走り出した。
きっとあの場所にまだおいでのはず…
「中宮様!中宮様!」
池中に響き渡る大声で何度も叫んだ。どれだけ中宮の名前を呼んでも池の周りを見渡しても誰も居ない。大きな月が池の水面に映し出され、ゆらゆらと揺れているだけだ。
暖かい風が優しく吹き出し、ヒラヒラと白いものが舞降りてきた。
…雪?違う…花びらだ…
振り返ると池の畔に沿って植えられている桜の花が満開だ。青白い月の光に照らされた桜の美しさに息を飲んだ。
桜?…なぜ?…き、季節が違う…
また暖かい風が吹き何枚もの桜の花びらがヒラヒラと雪のように飛んできた。
やっと気づいた…これ夢じゃない…
目の前に舞う何枚もの桜の花びらを見ながらその場にしゃがみこんだ。夢ではない…現実なのだ。
春になったら一緒に夜桜を見る約束だったのに…私の本当の正体を知る唯一の方だったのに…中宮様は私一人を残し何も言わずに逝ってしまった…
一気に喪失感と寂しさが押し寄せ涙が溢れ出た。泣き声が静かな夜の池に響き渡っている。
「燈花様~!燈花様~!」
遠くで誰かが呼ぶ声が聞こえる。
バタバタ、バタバタ…
「ハアハア燈花様、ご無事でございますか?」
小彩はそう言うと私の体をぎゅっと抱きしめた。
「見つかって本当に安心しました。あちこちお探ししたのです。燈花様?」
小彩は私の泣き顔を見て驚いているが、何も答えることが出来ない。これから起こるかもしれない得体のしれない恐怖と不安に一気に襲われ足がすくんでいる。
冷え切った体はガクガクと震えだし、声を出す事も起き上がることも出来ない。
「燈花様お体が冷え切っておいでです、急ぎ宮に戻りましょう。漢人、悪いけどここまで馬を連れてきてくれる?」
「承知しました」
私の運命を慰めるかのように何枚もの桜の花びらが頭上をひらひらと舞っていた。
畝傍山が見えた、この山の麓だ…あった!きっとこの小道だ。私は馬を止まらせ下りると、昨夜通った小道を走り出した。辺りはもう薄暗く空には昨夜のように明るく大きな月がぽっかり浮かんでいた。
はぁはぁ…着いた…
目の前には昨夜と同じように月明かりに照らされた美しい池が広がっている。池の畔にある東屋を目掛けて走り出した。
きっとあの場所にまだおいでのはず…
「中宮様!中宮様!」
池中に響き渡る大声で何度も叫んだ。どれだけ中宮の名前を呼んでも池の周りを見渡しても誰も居ない。大きな月が池の水面に映し出され、ゆらゆらと揺れているだけだ。
暖かい風が優しく吹き出し、ヒラヒラと白いものが舞降りてきた。
…雪?違う…花びらだ…
振り返ると池の畔に沿って植えられている桜の花が満開だ。青白い月の光に照らされた桜の美しさに息を飲んだ。
桜?…なぜ?…き、季節が違う…
また暖かい風が吹き何枚もの桜の花びらがヒラヒラと雪のように飛んできた。
やっと気づいた…これ夢じゃない…
目の前に舞う何枚もの桜の花びらを見ながらその場にしゃがみこんだ。夢ではない…現実なのだ。
春になったら一緒に夜桜を見る約束だったのに…私の本当の正体を知る唯一の方だったのに…中宮様は私一人を残し何も言わずに逝ってしまった…
一気に喪失感と寂しさが押し寄せ涙が溢れ出た。泣き声が静かな夜の池に響き渡っている。
「燈花様~!燈花様~!」
遠くで誰かが呼ぶ声が聞こえる。
バタバタ、バタバタ…
「ハアハア燈花様、ご無事でございますか?」
小彩はそう言うと私の体をぎゅっと抱きしめた。
「見つかって本当に安心しました。あちこちお探ししたのです。燈花様?」
小彩は私の泣き顔を見て驚いているが、何も答えることが出来ない。これから起こるかもしれない得体のしれない恐怖と不安に一気に襲われ足がすくんでいる。
冷え切った体はガクガクと震えだし、声を出す事も起き上がることも出来ない。
「燈花様お体が冷え切っておいでです、急ぎ宮に戻りましょう。漢人、悪いけどここまで馬を連れてきてくれる?」
「承知しました」
私の運命を慰めるかのように何枚もの桜の花びらが頭上をひらひらと舞っていた。