私の人生を変えてくれた人 ~もし君が生きてたら~ 前編
それからというもの、香音は目覚める度に暴れご飯も全く手をつけなかった
見るからに痩せていき、栗原先生も頭を抱えていた
そして脳外科では問題ないということになり精神科に移った
精神科の先生は………優しそうな女の先生だった
「こんばんはー」
「こんばんは………香音は…どうですか…?」
これがいつもの流れになった
仕事が終わると毎日、香音のところへ通った
そして先生に会う度に香音のことを聞いている
「香音ちゃん……まだ何も…話さないんですよね………」
「そう……ですか………」
香音は精神科に移って暴れなくなった
でも………言葉を一切発しなくなってしまった
ご飯は………相変わらず食べない……
「あっ、でも………一言だけ………ゆうとって………呟いてましたよ」
「本当ですか!?」
「はい
ただそれ以降は何も………」
「……………」
そっか………香音……俺の名前、呟いてくれたんだ………
香音の中で……まだ俺の存在があることが嬉しかった
香音……大丈夫だよ
ずっと側にいるからな