天才パイロットは交際０日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

　添田さんはそのＣＡらしき女性が私だと疑っていないらしく、真相がわかってすっきりしたような顔をしている。

「やっぱり噂っていうのは鵜呑みにするものじゃないな。城戸の噂はだいたい当たってるんだろうけど」
「なんで。ねえ、なんで俺のは鵜呑みにするんですか」

　不満げに食い下がる城戸さんをスルーする添田さんは、「手続きが必要なものがあるから、書類を用意してくるよ」と言って私たちのもとを去っていく。

　運航援助をしている社員たちの声が飛び交う中、胸をざわめかせて立ち尽くす私に城戸さんが言う。

「俺も知ってるよ。その噂も、ＣＡが誰なのかも」
「えっ!?」

　驚いて振り仰ぐと、彼は意味ありげな瞳でこちらを見下ろす。

「暁月と仲がいい子がいるのは本当。だから莉真ちゃんと付き合ってるって聞いた時、違和感があったんだよね」

　真実を探るようにじっと見つめられ、思わず目を逸らしてしまった。そんな存在の女性がいたなら、確かに私たちの関係を疑われても仕方ないかもしれない。

　ただ、点が繋がった気がする。陽和さんが誤解した理由だ。彼女もどこかで噂を聞いていて、あの場面を見たから相手が私だと思い込んだんじゃないだろうか。