天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
「お父様の影響で、ひとりでは得られない幸せを逃すとしたら悔しくないですか?」

 その言葉に、はっとさせられた。父のせいで最初から諦めていると思うと、確かに悔しい。

 夫婦関係をパイロットと情報官に例えられたのも、妙にしっくりくる感じがした。仕事で信頼している莉真とだったらうまくやれるんじゃないか……なんて、漠然と思った。

 それに、莉真も昔の男に縛られている。俺や拓朗たちとはまったく事情が違うが、誰かに囚われて自由に生きていけないなら手助けしてやりたい。

 そう思うと共に、それほどまでに彼女を虜にさせた初恋の男の存在を知って、無性にもどかしくなった。いつまでも感傷に浸っていないで、今近くにいる男を見ればいいのに、と。

「世界にふたりだけか……。そのくらい強制的に他の男性を見るような状況になれば、私も新しい恋ができるのかもなぁ」

 雪景色を見ながら彼女がそう言った時、心の奥でなにかが疼いた。彼女の中に、誰よりも強く俺を刻みつけてやりたい──。

 自分でも説明できない衝動が沸き起こり、気づけば唇を奪っていた。誰の侵入も許していない真っ白な地面に足をつけるような、少しの背徳感を抱いて。

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