天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
「HA1102,roger. Contact Tokyo control 132.45.(ヒノモトエアー1102、了解しました。132.45MHzで東京コントロールと交信してください)」

 交信を東京コントロールに移管する。これで私たちの業務は本当に終わりだ。

 ひとつ息を吸い、最後に伝えようと思っていた言葉を日本語で続ける。

「松本レディオは本日で管制塔業務を終了します。明日からはリモート空港としてよろしくお願いいたします。長い間、ありがとうございました」

 この無線はパイロットだけじゃなく、事務所でも、無線機があれば一般の人も聞くことができる。堅苦しい挨拶だけれど、皆に届いていたらいいなと願う。

 直後に、HA1102便から返答が来た。

『松本レディオ、ありがとうございました。いつもあなたの声に助けられていました。これからも、どこへ行っても応援しています』

 ──相良さんからの、予想外のメッセージ。

 最後に『Good day』と温かな声がかけられた瞬間、見開いた目に一気に熱いものが込み上げた。

『最後の管制、君の声で聞かせて』と言ったのも、わざわざ操縦を代わったのも、もしかして自ら私を励ますために? そんなの……感激するに決まってる。

 景色が涙でぼやけ、より綺麗にゆらめく明かりを映しながら「Good day……!」と返した。

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