可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─

王妃教育に燃える生贄姫

魔王執務室の隣の部屋、サイラスの執務室にてベアトリスは踏み台の上に立ったサイラスの講義を受けていた。


「最強の魔族として今だに恐れられているのが、竜族の『カオス』だ」

「竜族とは、ドラゴンですね。ドラゴンは言葉を理解しない野生型でしたよね」


ベアトリスはぶ厚い歴史書の中に描かれている屈強で巨大な、赤いドラゴンを見つめた。


王妃になると決めた日から、ジンの頼みによりサイラスの王妃教育が始まった。


「そうだ。竜族に交渉は無意味。強過ぎるので抹殺は諦めて、今も封印に甘んじている」


サイラスは竜の特性、殺すために用いる竜剣の弱点など細かい情報を授ける。


本格的な王妃教育が始まり、ジンがベアトリスを本気で王妃に立たせる気だと伝わってくる。ベアトリスは張り切って学んでいた。


学生時代に嫌われ者の先端を走ってきたベアトリスは、口喧嘩に負けないように、成績で舐められないように勉学は怠らなかった。


ベアトリスにとって勉強は得意分野だ。意欲ある生徒であるベアトリスは、サイラスに気になる点を問いかけた。


「カオスが最強と言うならば、魔王様よりお強いということでしょうか?」

「全盛期50歳のジンなら互角、老いた今のジンなら負けだな」


ぶ厚い本を閉じて、サイラスは何の興味もない瞳で淡々とベアトリスの質問に答える。


「魔王様は老いておられるのですか?」

「老いてなければ、寿命を延ばす生贄姫の涙などいらない」


それはそうだとベアトリスは腑に落ちる。サイラスの言葉は優しくはないが、教師として実に端的である。


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