不埒な上司と一夜で恋は生まれません
 


 ……なんだろう。
 慣れてない猫みたいになってるんだが、課長が、と思いながら、和香は庭に突っ立っていた。

 近づいたら、フーッとかって威嚇されそうだ。

 春になったので、耀の家には球根系の花々が溢れていた。

 意外にも雑に植えてあるので、おそらく、耀の母が、
「あんた、庭に花くらい植えなさいよ」
とか言って買ってきた球根セットかなにかを耀が、

 またなんかめんどくさいこと言ってきた、とばかりに、その辺に適当に植えたのではないだろうか。

 ――そもそも、庭まで入るつもりはなかったのだが。

 つい、未練がましく、この家の前を歩いていたら、花がたくさん咲いていたので、そんな情緒が課長にもあったのか、と驚いて庭を覗いてしまったのだ。

 すると、あの、一本なので、実がならないはずのオリーブの木にひとつ、実がなっていた。

 それで、驚いて庭まで入ってしまったのだ。

 なにかに対して身構えながら、扉から出てきた耀が言う。

「お前、以前、言ってたな。
 『いつか、このオリーブの実がなったら……』って。

 オリーブの実がなったら、なにが起こるんだ」
< 401 / 438 >

この作品をシェア

pagetop