「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 くどいようだが、二人の会話がきこえてきたのであって、盗み聞きをしたわけではない。

 だが、なぜか歩を止め、息を潜めて気配を殺していた。

 隠れるというわけではないが、壁にくっついて長身を屈めていた。

「もしかして」という推測が、確信となった瞬間を、いやというほど嚙みしめた。

 そう。この隠れ家へ移動している最中から、エドムンドとフェリペがカヨに気があるのではないか、と薄々気がついていたのである。

(クソッ)

 心の中でつぶやいていた。

 エドムンドとフェリペ、それから自分に対してだ。
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