「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「い、いやあ、それが喉が乾いてしまって」

 ヘラヘラ笑い、頭をかきながらそう言っていた。

(おれのバカッ! 『おれのカヨに手を出すなよ』と、どうしてガツンと言ってやらないんだ?)

 自身のバカさ加減にクラクラきた。

「もしかしたら、厨房に料理用の葡萄酒がないかなとこっそり見に来たんだが、厨房内が明るかったので出直そうと思っていたところだったんだ」

 嘘ではない。

 だが、きっと顔がひきつっていたはずだ。棒読みになっていたはずだ。

 バレバレの言い訳にきこえたはずだ。

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