「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~

宰相イグナシオ・オルティス

(世の中には、書物の中にしかいないような人たちがいるのね)

 強面の男たちを見、つくづく感心してしまった。

 元婚約者のアルファーロ帝国の皇太子ダニエル・ウリバルリには、護衛の騎士たちがつねに側についていた。とはいえ、そういう騎士たちですら、ダニエルのクズッぷりに振り回されたり呆れ返っていたけれど。それはともかく、帝国の上流階級の中には、私兵や護衛を雇っている人は少なくない。だけど、いま目の前にいるような、いかにもという感じの私兵や護衛にお目にかかったことはない。

 まるで書物の登場人物のような屈強な男たち。彼らは、厳粛な面持ちでわたしたちの身体検査をした。
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