「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
【クストディオ・トルタハーダ視点】

「はぐれ王子」もまた……

「やめろ」と、止めた方がよかったのか?

 しかし、カヨはぜったいにおれの言うことはきかなかっただろう。

 彼女は、たとえ神が止めようとあの扉を開けたはず。

 扉の向こうでなにがおこなわれているか。

 わざわざ見る必要などなかった。

 あの不快な音だけでわかりきっていた。

 だからこそ、たがいに顔を見合わせ、アイコンタクトを取り合った。

 アイコンタクトをとったとき、彼女は大きな溜息をついた。それが彼女の癖だということを、おれは子どものときから知っている。

 皇宮内で「はぐれ王子」と呼ばれ、蔑まれているおれに唯一本気でぶつかってくるレディ。それがカヨ・セプルベタ侯爵令嬢だ。

 彼女だけは、おれを蔑んだり虐げたりしない。

 こき使ったりいいように操作するようなことはあっても。
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