「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 執務室の控えの間なのにムダに広い。

 見るともなしに室内を見まわした。

 美術品など高価な装飾品があるわけではなく、豪壮な調度品が置かれているわけでもない。

 ローテーブルと長椅子、壁には本棚が設置されているだけのシンプルな部屋である。

 ガラス扉の向こうは庭園が見えていて、色とりどりの花々が咲き誇っている。その花壇のはるか向こうには、木々が並んでいる。

 アルファーロ帝国の皇宮もそうだった。

 クズとはいえ皇子の婚約者になって以来、毎日のように皇宮に通っては皇妃になる為の教育を受けた。それはもう過酷で、何度も心が折れそうになった。しかし、その都度「わたしは皇子を助けなければならない。セプルベタ侯爵家の為にもなるのだからがんばれ」と自分に言いきかせ、気合を入れては困難を乗り越えた。それは、教育が終わってクズが皇太子になってからも同様だった。そのときは、クズといっしょに学校に通って他の学生たちから彼を守った。宰相や各大臣たちの子息たちを、口や暴力でねじ伏せもした。学校を卒業し、クズが政の分野も携わらねばならなくなっても同じである。
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