「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 クズは、やはりクズだった。クズ以下になることはあっても、クズよりよくなることはなかった。

 書類一枚も目を通すことが出来ないバカだった。

 理解力はさることながら、忍耐力も機転も持ち合わせてはいない。彼の執務は、すべてわたしが担った。そして、政敵である宰相を始めとした政治家たちを、ときには怒らせたりビビらせたりした。

 そのわたしの様子があまりにもひどかったので、気がついたら「世紀の悪女」などと呼ばれるようになっていた。

 宰相たちからすれば、わたしなど「生意気でひとりよがりなレディ」にすぎなかったに違いない。

 だけど、わたしは無我夢中だった。クズを助け、守りたかった。人一倍、政や経済や宗教や文化を勉強した。自国だけではない。周辺国のそれらもかじった。広く浅くにすぎないけれど、他国の外交官ともやり合えるように備えたのである。

 それがこのザマである。
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