「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「連行しろ」

 アルマンドが命じた。

 ここで真実、つまり、アルマンドとの会話やその他もろもろほんとうにあったことを暴露したところで、だれも信じてくれない。それどころか聞く耳すら持たないに違いない。

 外交官だと騙り、ここにいるのだから。

「エド、フェリペ。なにもしないで。いまはまだ、ね」

 エドムンドとフェリペなら近衛兵たちを退け、わたしをここから連れ去ってくれる。さすがにアルマンドを殴ったり蹴ったり斬ったり突き刺したりは出来ないでしょうけど。それでも、わたしを無事に王宮の外へ逃してくれる。

 だけど、あえてそうはしなかった。

 アルマンドは、わたしたちが近衛兵たちに執務室から荒っぽく連行されるのを優越感に浸って見物したのでしょうね。

 きっとそうに違いないわ。
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