「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 というよりか、クレメンテ。わたしのすべてがダメって、初対面のしかもまだほんのわずかしか経っていないのに、わたしを全否定するって何様なわけ?

 体が不自由なのは承知しているけれど、彼の青白い美貌をぶん殴ってやりたくなった。

 もちろん、レディの中のレディであるわたしはそんなことはしないけれど。頭の中でその光景を思い浮かべつつ、お兄様推奨の深呼吸をして十数えておく。

「やめてくれ、二人とも。アルマンド。彼女を味方にするのなら、なにもきみが彼女を妻にむかえなくてもいいではないか。たとえば、わたしが彼女を妻にしてもいいだろう?」
「なんだって? ヘルマン、なにを言いだすんだ」
「だってそうだろう? わたしの方がまだ彼女も打ち解けやすいはずだ。きみは、彼女にかなり悪い印象を持たれているようだし」
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