「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「『すぐに戻って来い。おまえの働き如何によっては、また婚約してやってもいい。すぐに皇都に戻ってきて事態を収拾し、改善せよ』、だそうだ。補足説明しておくとだな……」
「いいわ、お兄様。彼の悲惨な状況は把握しているから」

 エドムンドとフェリペという凄腕の諜報員たちが、目の前にい政敵たちの情報だけでなく、アルファーロ帝国の現状も調べ、知らせてくれている。

 そうそう。エドムンドとフェリペは、わたしの元婚約者、つまりアルファーロ帝国の皇太子がまだ皇子だった子どものときの気まぐれにより、爵位を取り上げられたばかりか、両親を死に追いやられたさる伯爵家の息子たちだった。

 その伯爵家は、もともと騎士の家系である。建国当初から、剣一本で皇族を支え守ってきた家系。それが、クズ皇子の気まぐれでなくなってしまったのである。

 伯爵家そのものが、それから大切な命が。

 二人は、父親が逃がしてくれたらしい。まだ子どもだった二人は、名をかえて荒くれどもにまじって悪事を働き、剣の練習を重ねつつ生き抜いた。

 ひとえにクズ皇子ダニエル・ウリバルリに復讐する為に。
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