「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 クストディオとわたしの地道な活動のお蔭か、はたまた大司祭の威光のお蔭か、王宮内外に支持者がじょじょに増えつつある。
 この調子で「世紀の悪女」の経験をいかし、クストディオをなんとしてでも国王の座に就けてみせる。

 彼を見ながら、何度も気合を入れ直す。

 そんなある日、驚くべきことにお兄様がやってきた。セプルベタ侯爵家に昔から仕えている従者を二名連れて。

「カヨ。おまえの元婚約者から、おまえに命令がくだった。その使者としてやって来たんだ。まあ、わたしがおまえの様子を見たかったからというのが、志願した理由だけどな」

 お兄様は、執務室に入ってくるなりそう切り出した。

 元婚約者の命令?

 嫌な予感しかしないのですけど。
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