「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 クストディオは、寝台の上にある枕を一つ胸元に抱え、長椅子へと歩き始めた。

 わたしたちに与えられた部屋は、客室の中でも一番広いらしい。

 寝台、長椅子、ローテーブル、チェスト、本棚。オーソドックスな部屋で、とくになにかめずらしい物があるわけではない。絵画や彫刻があるわけではなく、それをいうなら花の一本飾られているわけでもない。

 部屋に二つ置かれている長椅子は、長身のクストディオではあきらかに寝心地が悪い。

「クスト、待ちなさいってば。やはり、わたしが長椅子で眠るわ。あなた、自分のサイズをわかっているの? その長椅子のサイズは、わたしにピッタリだと思わない?」

 クストディオは、わたしが顎で指した先に視線を向けた。
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