「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 どうせ拒否、もしくは反対されるだろうとは推測している。

 が、ヘルマンは「そうすれば?」、と意外な返事をよこした。

 ただし、エドムンドと朝の青年フェリペ・レンテリアを同行させるという。

 青年のレンテリアという姓になるほどと納得した。

 そう。知的だけど可愛い顔をしているその青年は、エドムンドの弟なのだ。彼もまた諜報員らしい。

 そうして、わたしたちはまた馬車に荷物を積み込み、ヘルマンの屋敷を出発した。

 バラデス王国の王都へ向かって。
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