「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 そのヘルマンが客間のひとつに案内してくれたが、なんと一部屋だけしか貸してくれないらしい。

 いや、たしかにおれたちは夫婦だ。おれたち、というのは当然カヨとおれだ。
 一応、おれたちは夫婦というていにしている。

 しかし、さすがに同じ部屋に彼女と二人っきりというのはまずくないか?

 しかも、部屋に入って文字通りぶっ飛んだ。

 キングサイズ、というのか? とにかく、客間の中央に大きな寝台が一つデンと置かれているだけで、あとは横になれそうなものといえば長椅子くらいなのである。

 その長椅子も、おれの背丈では横になることは出来ない。

 小柄なカヨがギリギリだろう。
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