「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 というわけで、ヘルマンはさっさと去ってくれたが、おれの内心の動揺や焦燥は増すばかり。

 つまり、どうしていいのかさっぱりわからないでいる。

 はっきり言って苦行だ。

 強情なカヨが「長椅子で眠るわ」と言ってくれたので、おれはムダに広い寝台に横になり、長椅子で寝息を立てている彼女をジッと見守った。
 それがどれだけ苦しくて切ないか。

 いいや。白状すると、ムラムラどきどきだ。

 灯りのない室内だが、カーテンの隙間から月光が射しこんでいる。

 彼女の寝顔は、控えめに表現しても天使だ。それはもう尊すぎて、欲情の暴走にストップをかけてくれるほどである。
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