「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
(仕方がない)

 祈るような気持ちで、そのまま左を下にして布団に沈んだ。そして、瞼を閉じた。

 はやい話が、眠っているふりをしてみた。

「な、なんてことなの?」

 彼女の叫び声が耳に痛い。

 その直後、おれは彼女の枕攻撃に晒された。

 彼女には、どんな言い訳も通用しなかった。

 翌朝、よりにもよってヘルマンにいやらしい想像をされ、カヨを余計に不愉快にさせてしまった。

 ヘルマンめ。胡散臭いだけでなく、聞き耳を立てていたのか。

 そう考えると、よりいっそう不信感が募る。

 すぐにでも彼の前から去りたくなった。

 だから、そうした。

 王都に向かうと言い、彼の前から去った。
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