天使が消えた跡は

プロローグ

 緑一面の芝生が広がり、子供たちが遊びまわる滑り台や砂場、ブランコなどの遊具もそろった公園。

 周りには大きな木が生い茂っていて、広く見える、小さな公園。

 子供たちがよく走り回る場所は、芝生が薄くなり、茶色い地面が見え隠れしている。

 一緒に遊んでいたお友達はいつの間にか遠くに行ってしまった。何か喋っているけれど、その声は届かない。

 何かに導かれるように小ぶりな木製のベンチに腰掛けた。このベンチも長年の雨風にさらされて色が薄くなり、綺麗な茶色は所々しか残っていない。

 お友達は何度も声を掛けてくるがよく聞き取れない。

 木枯らしが舞い、小さな枯れ葉がくるくると風と共に舞い上がった。何とも言えない小さな香りを伴って。



 小さな彼女の前に現れたのは、小さな可愛い男の子の天使だった。



 にこにことほほ笑む天使は、本当に愛らしい顔をしている。

「だぁれ?」

 女の子は小首をかしげながら彼に問いかけた。

「また会えるよ」

 笑顔のままで彼は言う。

 そうしてまた木枯らしが舞うと小さな香りを残して天使は消えてしまった。

 周りを見渡しても誰も居ない。不思議と不安を感じたその瞬間。

「早くー」

 という友人の声が聞こえた。遠くに居たように思えていたお友達は、目と鼻の先に居て、ブランコを指さしながら女の子をせかしていた。

 先ほどの小さな天使は何だったんだろう?
 小さな頭で一生懸命考えて、誰にも秘密にしようと心に決めた。

「今くよー」
 そして、二人はブランコまで笑顔で走り去っていった。
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