【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
「ええ、あなたの言うとおりです。学園卒業後は、王城付の事務官として採用されることになりました。残念ながら魔法騎士ではありません」
 王城付き事務官とは、王城で働く者の補佐をするのが仕事だ。
「僕は、騎士の家系であるグロセ家の娘と婚約したつもりだった。魔法騎士になれない君に、魅力は感じない」
 彼の言葉に少しだけ胸が軋んだ。
 だが、これでわかった。この婚約者もエミーリアという一人の女性ではなく、由緒ある騎士の家系であるグロセ家という家柄に惚れたのだ。なんとなくわかっていた。
 グロセ家はエミーリアの兄が継ぐ。それでもグロセ家出身の女性魔法騎士であれば、それだけで箔がつく。現にエミーリアの姉がそうだ。
「こんなことなら、最初からフリージアを狙っておけばよかった。君のほうが年も同じだし、釣り合いがとれると思っていたのに。まさか魔法騎士になれないだなんて、大誤算もいいところだ」
 フリージアとはエミーリアの姉である。二人とも茶色の髪に緋色の瞳で、遠くから見ても近くから見ても、よく似ている姉妹。ただ昔からフリージアは愛嬌があると言われていたが、エミーリアは表情が乏しいと言われている。
「わかりました。でしたら婚約解消届を、父のほうに渡していただけないでしょうか?」
「こういうときでも、君は顔色一つ変えないんだな」
 解消を言い出したのは男のはずなのに、なぜか切なそうな表情を浮かべていた。
< 7 / 246 >

この作品をシェア

pagetop