【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
第四章
 結局、その日はそれ以降、ローランと顔を合わせる機会はなかった。彼から呼び出されなかったためだ。
 書類の説明などもしたかったのだが、マヤンから転移して戻り、魔力枯渇状態であった彼に、仕事の話を聞くのも酷だろうという思いもあった。
 執務室の扉は開いている。だが、その奥の部屋へと続く扉は鍵がかかっている。
(やはり、転移魔法を使ったから、お疲れなのね……)
 その扉の前で、部屋にいるだろうローランに声をかける。
「団長。お時間になりましたので、私は帰らせていただきますが。体調のほうはいかがでしょうか?」
 エミーリアが心配しているのは、彼が中で倒れている場合だ。そうなった場合は無理やり鍵を開けて、部屋の中に押し入る必要があるだろう。
 耳を澄ませると、部屋の中からガタガタを物音が聞こえてきた。その音に安堵する。
「では、失礼します」
 淡々とした口調で挨拶をし、エミーリアは帰路につく。
 エミーリアも初めて行った魔力交感で気持ちは昂っていて、誰かに話を聞いてもらいたいとさえ思っていた。となれば、その相手はフリージアしかいない。
「ただいま帰りました」
 残念ながら今日は、サロンに姉の姿はなかった。出迎えた侍女に彼女の居場所を尋ねると、今は自室で休んでいるとのこと。
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