【短編】極上ヴァンパイアたちは薔薇乙女を溺愛中
「……構えもしないってか? ふざけんな!」
またしても怒鳴った潤さんは鋭い爪を突き出すが、銀髪さんは軽く避ける。
潤さんの突きは頬を掠っただけでかわされてしまった。
「なっ⁉」
驚く潤さんに銀髪さんは冷たいアメシストの目で無言で見下ろす。
その無言の圧力に気圧された様子の潤さんは、「ちくしょうっ」と捨て台詞をつぶやき去って行った。
何はともあれ戦いはひと段落したみたい。
緊迫した雰囲気が無くなりホッと息を吐いた次の瞬間、また私は緊張に体を強張らせることになる。
「で、お前は何者だ?」
「っ⁉」
近くで聞こえた声に悲鳴を上げそうになった。
優に十歩分は離れていたはずなのに、一瞬で目の前に銀髪が現れたから。
銀糸の髪から覗くアメシストの目が、静かに私を睨みつけていた。
「未契約の人間か? ということは今日の交流イベントの参加者か……」
よく分からないけれど、ヴァンパイアは気配とかで契約済みの人間かどうか分かるらしい。
それを感じ取って推測する彼に、私は息も止めて見入ってしまう。
今日見たヴァンパイアの中でもひときわ美しい顔立ち。
極上の男の色香にのまれそうになる。
でも、それ以上に……彼の白い肌につけられた一筋の傷。
そこからわずかに垂れる赤い血に、私の中の何かが呼び起こされる感覚がした。
またしても怒鳴った潤さんは鋭い爪を突き出すが、銀髪さんは軽く避ける。
潤さんの突きは頬を掠っただけでかわされてしまった。
「なっ⁉」
驚く潤さんに銀髪さんは冷たいアメシストの目で無言で見下ろす。
その無言の圧力に気圧された様子の潤さんは、「ちくしょうっ」と捨て台詞をつぶやき去って行った。
何はともあれ戦いはひと段落したみたい。
緊迫した雰囲気が無くなりホッと息を吐いた次の瞬間、また私は緊張に体を強張らせることになる。
「で、お前は何者だ?」
「っ⁉」
近くで聞こえた声に悲鳴を上げそうになった。
優に十歩分は離れていたはずなのに、一瞬で目の前に銀髪が現れたから。
銀糸の髪から覗くアメシストの目が、静かに私を睨みつけていた。
「未契約の人間か? ということは今日の交流イベントの参加者か……」
よく分からないけれど、ヴァンパイアは気配とかで契約済みの人間かどうか分かるらしい。
それを感じ取って推測する彼に、私は息も止めて見入ってしまう。
今日見たヴァンパイアの中でもひときわ美しい顔立ち。
極上の男の色香にのまれそうになる。
でも、それ以上に……彼の白い肌につけられた一筋の傷。
そこからわずかに垂れる赤い血に、私の中の何かが呼び起こされる感覚がした。