【短編】極上ヴァンパイアたちは薔薇乙女を溺愛中
***

 昔語られていたヴァンパイアとは違い、今のヴァンパイアは人間と共生している。
 太陽の光や十字架、にんにくが苦手などと伝説では言われていたけれど、あくまで伝説だったらしい。

 ただ、生きるための絶対的栄養素として人間の血が必要なのは事実だった。

 特に吸血衝動が強まり自制出来るほどの忍耐が育っていない13~18歳の頃は、ちょっとしたきっかけで人間を襲う可能性があるため、この月虹学園で隔離されるように過ごしているらしい。

 とはいえ、全く人間に関わらないのも将来の為には良くないということで、定期的に交流と称して他校の生徒と何らかのイベントを行っている。

 今回は学園案内ということで、三年生が人間のイベント参加者を連れて歩いていた。

「はーい、可愛いお嬢さん方。集団からはぐれない様に」

 葉加瀬(はかせ)(さく)と名乗った金髪碧眼の性格も明るそうなイケメンが軽やかに笑う。
 それだけで他の参加者の女子はきゃあきゃあ騒いだ。

「はぐれたらヴァンパイアの餌食になっちゃうかもしれないよ?」

 冗談めかしてウィンクをするのが様になるイケメンなんて中々いないな、と私は少し冷めた目で見ていた。

 カッコイイとは思う。
 この顔で迫られたら私だって流石にドキドキしてしまうだろう。

 でも私は他の参加者とは違って弟を探しに来たんだ。
 いくら人間社会ではめったに出会えない整った容姿をしているとはいえ、見とれてる場合じゃない。

 私は学園の大体の構造を見聞きして覚えながら、隙を見て集団から離れる機会をうかがっていた。
< 6 / 55 >

この作品をシェア

pagetop