幼なじみ、じゃない。

……今、なんて……?



涼が放った一言で、その場の空気がしんと静まった。


時が止まっているみたいに、みんなその場から動かない。もちろん、涼に腕を絡めていた高橋さんも、笑顔のままでぴしりと固まった。



だけどその空間でひとり、コツ、コツと音をたててこちらへ向かってくるのは、紛れもない、涼だけ。


みんな、吸い込まれるように彼を目で追っている。



そんな涼は、この空気をたいして気にしていないみたいで。



コツ……、と最後の足音が鳴り終わったとき、涼は私の目の前にいて、ぐいっと私の腕を引いた。


そしてそのままぐいぐいと教室のドアまで歩き出す。



「……え、ちょ、涼」


「ーーー行くよ、羽衣」


「……っ、え」



いやいや、ちょ、カバン……っ!


ぱっと後ろを振り返るとカバンを持ってきてくれた日葵がこそっと「がんば」と耳打ちしてウインクで送ってくれた。



~もうっ、日葵まで……!



急なことが起こって、慌てているのが見えなくても分かる。




…周りの子たちからのすごい視線と、ーー高橋さんの、キッとした目つきに一瞬びくりと怯んだ。




ーーけど、




私の腕をつかんでいる温もりで、じわりと心は温かくなるばかり。






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