幼なじみ、じゃない。


うつむきながら、ぐるぐると考えること。



ーーなんで、涼はあそこで私の名前を呼んだんだろう。



……期待しないほうがいい。というか、しちゃだめ。


涼は、ただ早く帰りたかった。それだけでしょ?


全部、都合の良いように解釈する私はほんとにばか。

さっきからずっと、そればっかり思ってる。



ーー途端に、教室での高橋さんと涼のようすが頭に浮かんで、胸が締めつけられる。



……わたしも、あんなに可愛かったら堂々と“幼なじみ”として隣にいられるのになあ……。



幼なじみとして隣にいることすら自信がないなんて。


ーー情けないなあ、私……。



「ーーー羽衣?どうしたの?」


「……え、あ……なんでも、ないよ」


「……そう」



……急、に、びっくりした……。


ーーなんで気づくの。

私、涼の少し後ろを歩いてたんだよ?



「ーーほんと、どうしたの?」



急にぴたりと止まったかと思えば、私の前でかがんで顔を覗き込まれる。



「今日の羽衣、なんか変」


「…そう?いつもと同じだよ?」


「ううん、なんか違う」


ーーなんで。


「ーーっ、変なのは涼だよ……っ!」


「俺?」


いつもだったら、私の名前を呼ぶことなんてしないのに。

てきとーにあしらわずに、楽しそうに相槌打ってるのに。



ーーなんで。


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