幸せの伝書鳩 ハートフルベーカリーへようこそ!

7.

 日曜日になると近所のお母さんたちが通りに集まってきます。 これからみんなで大掃除をするんです。
ワイワイ賑やかにやっているところへ一人のおばあちゃんがキョロキョロしながら歩いてきました。
 「おばあちゃん、おばあちゃん。 何処へ行くの?」 「孫を探しに行くんだ。」
「孫? ここに居るじゃないか。 おばあちゃん。」 若い男の人が心配しながら話しています。
 「いやいや、昨日出て行ったんだ。 私を置いて出て行ったんだ。」
掃除をしている人たちは唖然とした顔で聞いています。
 おばあちゃんはまたまた歩き始めました。
「おいおい、何処まで行くんだい?」 男の人は歩き始めたおばあちゃんを追い掛けるのですが、、、。
その時、パン屋さんの扉が開きました。
 (何だろう? 美味しそうな匂いがするな、、、。)
おばあちゃんを探していたはずなのに、男の人は美味しそうな匂いに釣られてお店の中へ入っていきました。
すると、、、。

 「おじさん、おじさん、おばあちゃんにこのパンを食べさせてあげなよ。」とクローバー君が焼き立てのトーストをくれました。
「これをかい?」 「そうだよ。 探し物とか忘れ物がきっと見付かるはずだから。」
「そうだといいけどなあ、、、。」 男の人は半信半疑で聞いています。
「やってみましょうよ。 やってみなきゃ分からないでしょう?」 そこへ心ちゃんがニコニコしながら言ってくれました。

 男の人はそのトーストを持っておばあちゃんを追い掛けました。 ずいぶんと遠くまで来ていたようです。
やっと追い付いた男の人はおばあちゃんを椅子に座らせると焼き立てのトーストを渡しました。
「おばあちゃんもお腹空いたろう? トーストを持ってきたよ。」
男の人がニコニコしながら手渡すトーストをおばあちゃんは美味しそうに食べています。
すると、、、。
 「おー、私はいったい何をしているんだ?」 「ばあちゃんさあ、俺が居なくなったって探し回ってたろう? 心配してるよ。」
「そうかそうか、、、すまんかったなあ。」 「さあ、帰ろう。 みんなが待ってるよ。」
 忘れん坊は誰にだって怒ること。
そんな時には優しくみんなで見守ってあげようね。
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