― 伝わりますか ―
「ところで、三つ目の道とはどのようなものでござりましょうや」

 飽くまでも武士らしい無骨な家来も、重みのある徳利をひとまず置き、三度目の好奇心を見せた。

「引き渡しも、(かくま)いもしない。ひたすら闘うのみだ」

 右膝を立て、その上に腕を乗せる。そこから覗き込むように見た視界には、側近の狼狽する姿のみが映った。

「ゆ……悠仁采様っ!」

「無駄だ。わしは考えを変えるつもりはない」

「しっ、しかし!」

 悠仁采は立ち上がった。既に話さなければならない時は過ぎ去ったのだ。

「月葉様を……いや、月姫様を、愛していると申されるのでござりまするか」

「だったら、どうする」

 側近が歯を喰いしばり、上目遣いで睨めつけているのは容易に見て取れる。

「皆に伝えておくが良い。“わしは遠からずも二十日後、織田か水沢のどちらかと戦うだろう。臆病者は早急に立ち去れ”とな」

「わ……分かり申した……」

 悠仁采は側近を冷たくあしらい、闇の中に消えていった。

「愛されることは罪ですぞよ、悠仁采様──」

 悠仁采様──。






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