【短編】会いたいと切に願う

あ、何か気持ちいいかも!
よぉーし。


私は、再び海に向かって叫んでみた。



「私の青春かえせー!! 冬真のばかーっ!!」



……ふぅ。スッキリ。

あっ、冬真って私の元彼ね。ついさっき別れ話した彼ね。


それにしても周りを歩く人たちの視線が痛いけど、気にしてられないっての。


三年は長いのよ!!

花の十代が無駄になったわ。

もう二十一歳だし。

ん? 結婚には早いって?



「クスクスクス……ッ」

「誰!?」



突然後ろから聞こえてきた笑い声に、私はガバッと振り向いた。

その反動で棚引く髪を手で掻き上げながら、視線を向けた先には……。


俯きながら声にならない笑いを出している男の姿があった。



「何笑ってるのよ?」

「ごめん突然。こんばんは」

「はぁ、こんばんは」



まるで雪のような白いメッシュの入った金髪。

見上げるほどの長身にスラリと伸びた手足。

白いダウンジャケットに黒のパンツ。


どこぞのヤンキー?



「……じゃなくて、何笑ってるのよ!!」



こっちは今、失恋したばかりなのよ。

傷心の私に向かって笑うなんて、一体どういう神経の持ち主なのかしら。


って、そんなこと知るわけないか、アハッ。



「ねぇ、名前は?」

「えっ? ……柊」


「ふぅーん、ひいらぎちゃんね。よろしく」



差し出された右手に、反射的に手を差し出して握手をした。


顔を上げた彼は切れ長の目に泣きぼくろ。

鼻筋の通った鼻に、口角の上がった口元。

クシャっとなる笑顔。


見た目怖そうなのに、笑うと可愛いー!!


ヤバイ、私の好みドストライクかも!!





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