学校一のイケメンと噂の先輩は、優しい吸血鬼でした
「おいクソジジイ。秦野ちゃんは……って、秦野ちゃん!」
扉を開けたのは城山先輩で、先輩は私を見て駆け寄ってくる。
けど途中でそのおじさんに阻まれた。
「邪魔だな。
秦野ちゃん大丈夫?何もされてない?」
「はい、大丈夫です。
美味しいお茶とお菓子を頂きました。」
「そっか、よかった。
…どういうつもり?」
「こうでもしないとうちに帰ってこないだろう。」
「帰るわけないだろ。吸血鬼嫌いだし。」
「そう我儘も言ってられん。
純血は減ってきているんだから。」
「減ればいい。そして滅びろ。」
……全く話が読めない。
「帰ってくるつもりがないなら、その子は預かるよ。」
「は?」
先輩がおじさんから私に視線を移す。
そして私の座っている椅子をみて、理解したようだった。
「最低だな。」
「なんとでも言え。」
「あの、先輩、どういうことですか?」
「その椅子はこいつの血が含まれてる。いつでも秦野ちゃんに手を出す準備が出来てるってこと。
そんで、こういうことするのは、俺に純血の吸血鬼と結婚させて、後継ぎを作らせるため。」
「結婚…?後継ぎ…?」
「純血以外の人と交われば、もう純血の子が出来なくなるから、俺に特定の子ができたってなって、慌てて呼び戻そうとしたんだろうね。」
「なるほど。」
「ま、俺は吸血鬼嫌いだし、そんなつもりさらさらないけどね〜。」
「吸血鬼なのに吸血鬼嫌いなんですか?」
「うん。血吸って生きてるとか気持ち悪いじゃん?」
「そうですか?人間も牛の肉とか臓器とか食べますよ?似たようなもんじゃないですか。」
「ははっ、やっぱ秦野ちゃんいいね〜。好き。
てことで俺、秦野ちゃんと結婚したいから無理。」
「その子がどうなってもいいと?」
「秦野ちゃん。お守りの蓋あけて、その椅子にぶちまけてそこから逃げて。」
「なんだ、お守り?そんなもので逃げられると?」
「俺の愛が籠ってるから逃げられる。」
2人が言い合っている間にも、私は言われた通りに持っていた小瓶の蓋をあけて中身を椅子にぶちまけると、その椅子から離れる。
「……中身はお前の血か。匂うとは思っていたが、そんな物を人間なんかに持たせるとは。」
「お前みたいなクソ野郎がいるからな。」
「でも残念だったな。
用意してるのはその椅子だけではない。」